本文は、米国イリノイ州に本部を置くＮＲＡ、Ｎａｒｉｏｎａｌ　Ｒｅｎｄｅｒｅｒｓ　Ａｓｓｏｃｉａｔｉｏｎ（全米レンダラーズ協会）が、現代の複雑な社会において政治・経済など多くの分野で社会的使命を果たしているレンダリング業の存在意義と認識の普及・啓蒙の為、１９７０年代に発行した冊子からの引用です。アメリカのような成熟された社会でも時として理性が失われた反応が起こりえるということでしょう。 ３０年以上も前の資料であり、現在の状況にそぐわない内容（特にＢＳＥ発生の今日では）も含まれてはいますが、平成１３年、日本にＢＳＥが発生した際には同じような状況が起こる直前まで行ったのです。レンダリング先進国である米国、またレンダリング業者の置かれた立場を知るに、大変参考になるものであるため、敢えて掲載させていただきます。

あなたは想像できますか？

いったいどうしてこんな混乱状態が発生したのか、誰も真相は知らなかった。

　確かにいろいろな噂はあった。地域の悪評だとか、余剰油脂の急増だとか、世界情勢の悪化だとか、政治問題だとか、御役所のなわばり争いだとかという悪条件はいっぱいあった。おそらく、こんな悪条件がみんな重なって、今、全国の大部分の地域で発生している恐ろしい混乱になったのだろう。

　ともあれ、恐ろしい事態は事実起こってしまっている：全国ほとんどのレンダリング工場が大小の区別なく閉鎖、操業中止に追い込まれたのだ。

　新聞やテレビは、恐ろしい事態を報道している。“全国のレンダリング工場閉鎖”　─　“レンダリング危機で州兵出動”　─　“中西部で家畜死体問題悪化”　─　“レンダリング停止で公共衛生の危機”　─　“市場暴落、レンダリング危機” 　─　“レンダリング操業停止で失業者の大群”　─　“下院でレンダリング問題特別討議”

　勿論、この国家非常事態の話はフィクションで、こんな事態が実際に起こることはほとんど、ないだろう。現在、調和のとれた経済に対するレンダリングの重要性は、社会のあらゆる分野で広く認識されている。

　しかし、それでも．．．知識が普及し、社会的協力が認識されている近代社会でも．．．私達の複雑な社会では、時として、思いがけない圧力や理性を失った反応が吹き出すことがある。そして、これらの要素がおそらくおさえがきかなくなって社会に衝撃と損害を与える。例えば、１９６８年に起こったニューヨーク市清掃作業者のストライキでは、数日間１００，０００トンものゴミが町中の路上に放置された。このときの恐ろしい状態は国中のレンダリング工場がほんの短期間でも操業を中止するときに起こる状態と多くの点で共通だ。

　それは、さておいて、国の経済、そして、衛生にとってのレンダリング業の不可欠な重要性は、国中のあらゆる階層の良識のある人々には明白だ。常識ある人なら、地域のレンダリング業者が定期的に家畜の死体や廃脂や骨を集めてくれるので公衆衛生が保たれていることを理解してくれる。

　しかし、米国のレンダリング業者が毎日毎日集める材料、集めなければ路上で積み重なって、腐っていく材料が毎日８０，０００，０００ボンド（約３６，０００トン）という膨大な量であることを知っている人はほとんどいない。

　レンダリング業者のトラックが肉屋や屠殺場や食料品店などを毎日まわって（しかも代金を払って）屑脂や骨や肉のスクラップを集めていることを知っている人はあまりいない。また地域の農家や畜産家が電話でレンダリング業者を呼んで動物の死骸を引き取らせていることを知っている人もほとんどいない。動物の死骸を引き取ってもほとんどレンダリング業者は採算は合わないのが普通である。しかし引取り用のトラックは最近では無線で連絡がとれる最新式のものが多い。このような毎日の業務がどこの地域でもどうしても必要であり、公共衛生を万全に保つためにレンダリング業者の存在は不可欠なのだ。

考えてみて下さい

　地域のレンダリング業者は税金を払って公共衛生や地方や国の政府の財源に大きい貢献そしている。
　レンダリング業者が納める税金は政府や一般経済のあらゆる段階で働いている。資産税や学校税は大規模な自動化したレンダリング　プラントの場合は特に大きい金額だ。もちろんレンダリング業者は設備や材料の購入に伴って物販販売税を払っている。そのうえ収入には多額の所得税がかかっている。

考えてみて下さい

　あなた方の生活水準の向上にレンダリング業者の製品を利用した近代的製品が役立っていることを考えて下さい。
　もちろん一般大衆にとって日常生活の便宜や改善は少しずつ進んでいて、レンダリング業者が普通捨てられるような材料から作る製品が何でもない品物の中にどれだけ広い範囲で使われているかに気がつかない。
　獣脂は良質の石けんの大切な原料だ。家畜や家　や豚の改良飼料には餌用の脂肪や肉／骨の飼料が使われ、またパッケージになったペット・フードもそうだ。獣脂から作る脂肪酸はますます多くの製品、例えば研磨剤シェービングクリームやアスファルトタイルやジェットエンジンの潤滑剤やろうそくや水漏れ防止剤やセメント混和剤やクリーナーや化粧品や防臭剤や塗料や艶だしや香料やプラスチックや印刷インキや撥水剤などの製品の製造にますます用途を広げている。

考えてみて下さい

　地域のレンダリング業者がどれだけ実用的で継続的な研究で将来を探求し、未来をより良くするためにレンダリング業者が何ができるかを考えていることを考えてみて下さい。 　米国のレンダリング業者の多くはナショナル・レンダラーズ・アソシエイションや脂肪蛋白研究財団の会員として最も現実的な方法で将来を追求している。彼らは定期的に各地域社会で生産する獣脂や副産物を利用する新しく改善された使用法や製品の開発のための種々の研究や調査に資金を提供している。どのレンダリング業者も現在公共衛生と福祉の防衛をめざして公共機関と協力するため、近代的な水や大気の汚染対策設備に資金を投資している。その最終的な結果はもちろん公共の利益になる製品であり、そして地域社会に対し雇用やより良い生活やより良い健康や社会が必要とする所得や税金の大きい部分の分担をするレンダリングという事業の継続である。

　本当にもしもレンダリング工場が操業をしなくなるようなことがあれば、例え数日でも皆にとって大変な悲劇となる。少し考えてみればこの業界が我々の健康や近代経済や生活にどれだけ必要であるかがわかる。

　そして事実全世界を通じての飼料や人類の要求を満たすという問題が大きくなるにしたがって地域や国やそして世界の段階に置けるレンダリングの重要性は大きくなる一方だ。このようにレンダリング業者は、これらの問題を解決し皆のための利益に転換する重要な役割りを担っている。

考えてみて下さい

　あなたの住んでいる町や郡や州の中でどれだけの人々が生活の全部または一部分でレンダリング業界の恩恵を受けているか。
　国中のどの地方でもかなりの人がレンダリング産業に直接従事している。
　その中にはトラックの運転手やプラント従業員や管理職や事務員やパッキングや輸送の助手や研究所員やセールスマンや経営職がある。それ以外にまた無数の人々が間接的に種々の程度でレンダリング産業から部分的に生活を得ている。例えば農家やレンダリングの副産物の源泉である家畜を飼っている牧畜業者や多量の獣脂を必要とする石鹸や化学薬品や脂肪酸その他の加工工場の従業員や──多量の脂肪や肉や骨肉や鳥毛肉その他を毎年消費する飼料工場やペット・フードの製造業者の従業員や──化粧品や塗料や潤滑油やその他類似の消費商品の製造や卸しや小売りで生活している人々や──米国のレンダリング製品を扱って生活の全部または一部分をまかなっている倉庫労働者から湾岸労働者や海員、さらには外国における同業者や販売店や販売員などを含む輸出関係の人々が含まれている。（毎年米国製の工業用樹脂やグリースは外国市場で販売するため、生産量の半分以上が輸出されており、１９６６年の獣脂輸出は２２億１１００万ポンド以上であった。）

　

考えてみて下さい

　レンダリング業界は、製品を輸出して国の貿易収支の改善に貢献し、また海外での米国のイメージ向上にも貢献している。
　毎年米国製非食用獣脂の半分以上が輸出されている。ほとんどのレンダリング業者は規模に関係なく多量の樹脂や脂肪やその他の動物性副製品を海外の客先に出荷している。これらの積み出しは大部分輸出ブローカーが扱うが大手のレンダリング会社の中には直接自分の手で送り出すところもある。これらの売上は全て米国にとって黒字となり、毎年１．５億ドル以上をかせぎ、米国の全準備の流出をおさえ、国の国際収支に貢献している。そのうえ各地域のレンダリング業者はいってみれば我々の裏庭で作ったような製品を外国市場に売ってその米国製獣脂や脂肪が世界で一番良質であるという評判をとり、また世界中の人々の役に立つ石鹸や肥料や消費製品などの製品として提供することによって海外における米国のイメージの向上に貢献している。